ALE & BOOKS & CIDER 2024|くにぶる醸造士 小針明日克

読書に合うのは、どんなビールだろう?
くにぶる醸造士 小針明日克からの一冊を紹介します!
ALE & BOOKS & CIDER 2024
https://kunitachibrewery.com/ale-books-cider-2024/

吉田 ルイ子『ハーレムの熱い日々』 筑摩書房 1972年

舞台は1960年代のアメリカ、公民権運動が活発化する中で、なおも黒人差別が色濃く残る時代。本書はニューヨーク・ハーレムに暮らし、隣人たちの写真を撮り続けた日本人フォトジャーナリスト、吉田ルイ子氏のルポルタージュです。

私はビールと同じくらいHip HopやJazz、Soul、Funkといった、いわゆる「Black Music」と呼ばれているものが大好きです。

60年代のニューヨークと言えば、今年誕生から50周年たったHip Hopを除きどのジャンルにおいても数々の輝かしい名盤が誕生した年代でもあります。

そんな名盤の生まれた時代に思いを馳せながら、日本人としての視点と著者の美しい写真とともにその時代の彼らの暮らしを垣間見ることができるのがこの本です。

そして当時のハーレムと言えばアメリカでも有数のスラム街。そして人種差別がまだまだ強い時代。

人種差別に立ち向かう人々の記録です。

数多くのエピソードの中で印象に残っているのは著名なジャズミュージシャン達が黒人というだけでステージ裏では不当な扱いを受けていたこと。この時代の彼らの音楽はいつも「何か」と戦い、メロディーやコードを打ち破り「自由」を求めているように感じる時が多くある。その様子や音楽から感じる緊張感はこのエピソードを聞いてからではまるで聞こえ方が変わってきます。

この本が発売から52年もたった今でも全く古臭さを感じることがないのは、人と人の間における本質的に大事にしなければいけないことを普遍的な言葉で私たちに教えてくれるからだろう。

本書との出会いは『ALE&BOOKS&CIDER』の選書フェアを開催している東京・学芸大学のCOUNTER BOOKSさんでした。この企画が決まる前、たまたまお店を訪れた時に購入したことに何か偶然とは思えないものを感じ取り上げさせていただきました。

時間の経過、一口ごとに味わいが深まっていくようなビールと一緒に一言一句噛み締めながら読みたいそんな本です。

最後に2024年5月31日にお亡くなりになられた著者にご冥福をお祈りいたします。

小針明日克
KUNITACHI BREWERY 醸造士

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