ALE & BOOKS & CIDER 2024|セールスマネージャー / ディレクター 小林なお

読書に合うのは、どんなビールだろう?
くにぶるセールスマネージャー 小林なおの一冊を紹介します!
ALE & BOOKS & CIDER 2024
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カルヴィン・トムキンズ著 青山南 訳『優雅な生活が最高の復讐である-Living Well Is the Best Revenge-』 新潮文庫 1984年 ※版元品切れ

雑誌「ニューヨーカー」のスタッフ・ライターとして活躍したカルヴィン・トムキンズが描くのはF・スコット・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミングウェイ、パブロ・ピカソ、コール・ポーター、ドロシー・パーカーなど多くの芸術家、作家と交流のあったマーフィ夫婦の華やかで自由な生活と、彼らが追い求めた「本物の生き方」が描かれた本だ。

1920年代パリで暮らしていた当時、パリに移住したアメリカ人に多かったとされる思い詰めたボヘミアニズムとはあまり共通していない生活をしていたというマーフィ夫婦。

2人はアメリカから最新のレコードを手にいれ最新のダンスも知っていた。アメリカのものには何にでも興味を持ったフランス人たちはマーフィー夫婦の歌う黒人民謡や黒人霊歌に驚喜して耳を傾けたという。また、彼らは愉快で真剣で人を楽しませることに情熱を傾けていた。

実業家であり本質的には画家であるジェラルド・マーフィは「絵をはじめるまではぜんぜん幸せじゃなかった、絵をやめざるをえなくなってからは二度と幸せになれなかった。」と語り「大事なのは、何をするかではなくて、なににこころを傾けるかだと。人生の自分の作り上げた部分しか僕には興味がないんだよ。」という言葉を残している。

心惹かれるものに出会い、心惹かれるものを取り入れて生活の柄とすることが優雅な生活であると気づかせてくれる。

「快適な生活とひどい仕事、ひどい生活と美しい仕事、どちらかだよ」と、ジェラルドの好きだった言葉があるが、生活の中で何に心を傾け選ぶのか。世界中のビールが集まる今の日本では、たった1日の中でも好きなビアカフェ、ボトルショップに出かけ国内外のビールを選び、心を傾ける自由という贅沢さがあります。そこには、マーフィー夫妻が生きた時代にはなかったであろう優雅なひとときにリベンジするための現代的なヒントがあるのではないでしょうか。

この本の中には特に優雅さを具体的に描写した部分はなく、筆者が優雅さという意味が人々の生活の数だけ無数に存在していることを知っているからこそ、具体的には描かれていなくて、鮮明に描かれていない。そこがこの本を紐解く際に余白をもたらせてくれ、ビールとのおいしい関係を築いている。

お好みの本を読み進める今日も、グラスを持つ右手の先には自分らしい優雅な日々の泡が広がっているのだ。

小林 なお
KUNITACHI BREWERY セールスマネージャー / ディレクター

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