Raw Ale #4

くにぶるで実践している、煮沸せずに醸す伝統製法のビールについて、これまで3回に分けてお話してきました。

「Raw Ale」は、煮沸すると消えてしまう香りや風味がしっかりと残されたビアスタイル。
今回はその「香り」について、少し深いお話ができればと思います。

醸造家の間でここ数年注目されている、バイオトランスフォーメーション / Biotransformation。
ビールの飲み手にとってはあまり馴染みのない言葉だと思いますが、
これはビールの発酵中に、酵母が特定の香り成分を別の香り成分に変える働きのことです。

例えば、バラなどにも含まれているゲラニオールという香り成分があり、
「ゲラニオールリッチなホップを多く使うと、発酵後にビールのアロマやフレイバーが増す」ことが知られています。
(ゲラニオールという成分が、発酵によってシトロネロール、ネロール、リナロールの3つに変化するため)

このゲラニオールと同様に注目されているのが、チオールという成分です。
チオールはビール醸造よりも少し先に、ワイン醸造の分野で研究が進んできた香り成分で、
ビールにも好ましいアロマやフレイバーを与えることが知られています。

チオールリッチなホップには、例えば「Hop Filament -Citra-」のシトラや、
「世界は点滅するモザイク模様のように」のモザイクをはじめ、たくさんの品種があります。
チオール自体にも様々な種類があり、関係する香りはそれぞれ異なります。

このチオールという成分の特筆すべき点は、
ホップだけでなくモルト(麦芽)の中にも存在しているところです。

チオールに着目することで、モルトが持っている香り成分を引き出しやすくなり、
ホップをふんだんに使うビール(Hazy IPAなど)=香り豊か、という定義が覆され、
新たなクラフトビールへの挑戦の幅が、さらに広がっていきました。

また、チオールの中にはタンパク質タイプの分子と結合しているチオールがあり、これまで活用が難しかったのですが、
“ベータリアーゼ酵素”によってその結合を壊すことで、活用できることがわかってきました。
北米では“ベータリアーゼ酵素”のポテンシャルを大幅に高めた酵母が開発され、醸造士界隈ではにわかに話題になっています。

つまり、煮沸させないRaw製法によって、
高温にすることで飛んでしまう麦やホップの香り・風味を残し、
さらに酵母の働きも加えることで、より厚みのある香りを持つビールができる
のです。

こうしたたゆまぬ研究や新技術の発見によって、
複雑で多様なアロマやフレイバーを持ち、高アルコールでも低アルコールでも味わい深い、
日本食や、日本人の日常になじむビールがさらに増えて、文化はさらに豊かなものになっていくはず。

飲み手の楽しみ方が多様になるなら、作り手の考え方ももっと多様にならなければいけないと思っています。
ただ高品質とうたっている材料を使えばいいのではなく、なぜその原材料を使うのか、
ただ地産地消だからいいのではなく、世界中の産地や品種の中からなぜそれを選んだのか、
という動機がもっと重要になっていきます。

チオールが注目されたことで、ワイン醸造でブドウの産地が重要視されてきたように、
ビールの麦の産地にも今以上に注目される時代が、もうすぐそこまできているのかもしれません。

これからもRaw製法で様々な国のモルトを使い、可能性を探求していきたいと思っています。
(醸造長 斯波克幸)

Raw Ale #1 -NON BOIL BEER-
https://kunitachibrewery.com/raw-ale-1/

Raw Ale #2 -伝統-
https://kunitachibrewery.com/raw-ale-2/

Raw Ale #3 -低アルコール-
https://kunitachibrewery.com/raw-ale-3/

Raw Ale #4 -麦の香りを引き立てる-
https://kunitachibrewery.com/raw-ale-4/


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